coetaneo







どどどどどどどどうしよう!
、最大のピンチです!っていうか二十四年間の人生の中で1番?人生初の生命の危機というか、そんな感じのものを全身全霊で感じています!

「なんで私、逃げてきちゃったかな…!」

校則違反もなんのその、全速力で校舎裏まで駆けてきたところでようやく立ち止まった私は(正確には息切れして止まっちゃったんだけど)今更ながら思い切り後悔した。何をって、応接室から逃げてしまったことを、だ。もちろん今更応接室に戻って「さっきはすみませんでした」なんて言うわけにもいかず、後悔してみたところで何が変わるわけでもないけれど。
怖かったから。そう言ってしまえばそれまでだけど、さっきの雲雀恭弥はトンファーを持っていたわけでもなかったし(仕込みって噂だからいきなり出てくるかもしれないけど)、何かを話そうとしていたのに。

「絶対私、雲雀恭弥に咬み殺される…」

あ、なんだか想像するだけで泣けそうだ。でも、仮に相手が雲雀恭弥じゃなかったとしても、喋ろうと思っていたところを邪魔されて、しかも全速力で逃げられて良い気分になる人なんていないだろう。私だって、ちょっとムッときちゃうと思うし。
そ ん な こ と を 雲 雀 恭 弥 に や っ ち ゃ う な ん て !
私ってば、なんてチャレンジャー!


「ううぅぅ…ああ、ごめんね""。かくも儚く短き人生…」
!」
「そう、私は…って、ツナ!?」


壁に向かっていた顔をガバリとあげて、振り返った先には今朝からずっと逢えずにいた、""の幼馴染の姿があった。両隣には、彼のふたりの友達も。

「ツナ…なんだか、すっごく久しぶりな気がする。ふたりも久しぶり」
「いやいやいや、昨日の夕飯ぶりだから!」
「ははっ!は、相変わらずだなー」

挨拶をすると、例によって例のごとく、山本くんは朗らかに笑って、獄寺くんは「よう」と視線だけで返事をくれた。そういえば、ふたりに逢うのも一週間ぶりくらいかな。夏休み、ツナとはよく遊んでいたみたいだけれど、私は毎回参加していたわけじゃなかったし。まあ、ツナとはよく奈々さんに誘われてのお夕飯の時に逢うんだけど。

「それより、こんなところで何やってんだよ」
「何って…校内を散歩中?」
「疑問系だし!散歩にしたって…転入したてで一人でなんて、迷ったりしたらどーするんだよ」

ふわり、そんな言葉がぴったりだった。ほんの少し前に、雲雀恭弥に感じていたいろんなピンと張っていた感情が、ゆったりとたわんで落ち着いたような。
散歩にしたって…転入したてで一人でなんて、迷ったりしたらどーするんだよ
ねえ。それって、私を心配してくれていたってこと?

「…ツナ、私のこと心配してくれてたの?」
「う…だって、今朝はオレ、寝坊してと一緒に学校行けなかったし」
「ツナのやつ、教室でずっとのことばっか口にしてたんだぜ!」
「私の、こと…?」

今日は、二学期が始まる日。
コミックでは、ツナは笹川了平くんとボクシング対決をしていて、大好きな京子ちゃんのことを考えてどうしたらいいだろうって、悩んでいる日だった、はずなのに。
山本くんの言葉に、少しだけ視線を外したツナの耳は、ほんのり赤く染まっていた。その横で相変わらず獄寺くんは静かだったけれど、どこか不機嫌そうな表情が言葉の正しさを教えてくれる。
ああ、私。朝はあんなに文句ばっかり言っていたのに。
ツナは、そんな私の心を軽々と飛び越えてしまうのだ。

「…ありがとう、ツナ。心配かけてごめんね」
「そ、そんなことより!今までどこに行ってたんだよ。、携帯も持ってないから連絡取れないし。それに…さっきの放送も」
「あ。あれは大したことなかったの。ただ、ちょっと書類に不備があったから、書き直してって言われただけ」
「応接室に?」
「…他の教室が、埋まってたんじゃないかな」

会話の最中で、思い出したことがあった。
そういえばコミックでは、ツナたちと雲雀恭弥が逢うのは笹川了平くんの話よりも少しだけあとだった。ということは、応接室が風紀委員の溜まり場だと、ツナたちはまだ知らないのだ。クラスメイトの田中さんはすでに知っていたところをみると、二年の間では有名なのかもしれない。あ、でもツナって雲雀恭弥のことも最初は知らなかったみたいだし…他の一年生はわからないかな。
けれど、少なくともツナが知らないのであれば、今は言わない方がいいかもしれない。少しだけ、ほっとした顔をしているツナの横顔を盗みみて思った。だって、余計な心配をかける必要は、欠片だってないのだから。

「あ。そういえば、クラスはどこになったの?」
「二年B組だよ。縦割りだと、ツナたちとは離れちゃうね」
「な…ッ!」
「ん?どうしたの、獄寺くん」
…お前、年上だったのか!?」
「オレも知らなかったぜ。そっかー二年だったんだな」
「………ふたりとも」

込み上げてきたのはなんと言うか、やっぱり私って性格も子どもっぽいのかな、という脱力感にも似た情けなさ。…呼び捨て、タメ口の段階でそんな気配は感じていたけれど、実際に言葉にされると余計に傷つくのだ。もちろん、彼らが誤解していた原因のひとつには""がツナの幼馴染だから、ということもあるんだろう。幼馴染イコール同い年。そんな方程式が生まれてしまうことは、存外おかしなことではないはずだ。私とだって、同い年だったわけだし。

だから別に、私の精神年齢が低いことだけが一概に原因じゃない大丈夫私はちゃんと24歳社会人。

「…?」
「な、なんでもないよ!」

ふたりと別れたあとのツナとの帰り道。ツナが話してくれた笹川了平くんとのことの顛末に耳を傾けながら自分に言い聞かせるようにそんな言葉を唱えていたのは、もちろんツナには内緒である。



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※同い年の?。