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#2-1
ピ ピピ ピピ ピピピ ピピピピ・・・・ドガン!
「…うー…めんちゃいこ、すぱげってぃ…」 「!朝だぞ!起きろー!!!」 朝の平穏な一時。 …私には、空の星よりも遠い存在らしい。 「んー…あーよく寝た。おっはよー、圭介」 「お は よ う、じゃない!お前、昨日帰ってきたら即行で寝やがって!夕飯が無駄になっただろうが!!」 「やだなぁ、圭介ってば。朝からそんなに叫んじゃってー」 「……どうやら、一度痛い目をみないと、その寝ぼけた脳みそは目覚めないらしいな」 「あーだから起きてるって。っていうか、なんか目がシパシパする…」 というか、左目が痛い気が… そう感じて無造作に擦ろうとしたら、強い力で止められた。 うー朝から私の部屋に不法侵入(実は共有だけど)して、しかもいきなり怒鳴ってきて、痛い目を擦るのも許してくれないなんて…!圭介、酷すぎ!! 「違う。下手に擦ったら目に傷がつくだろ!」 「あ、そっか。昨日、寝るときコンタクト外すの忘れてた」 「アホ!」 だってー昨日は久々に瞳使って、結構疲れてたんだよー お嬢様とのお話も想像以上に弾んで、気がついたら8時過ぎてたし。コンタクト外すなんてもう、意識のすみっこにも無くて… 「ったく…それで失明したらどうするんだよ!ほら、こっち向け」 「んー目、開けるの痛いー」 「甘えるな、っつーの!ほら…よし、取れた」 左目の視野が少しの間失われたあとで、圭介の手には薄っすら黒いコンタクトが乗っていた。 本当は綺麗に洗ったちょっと濡れた手で取るほうが痛みもなくていいんだけど、さすがに非常事態だし。カサカサに乾いていたそれを近くのティッシュで包んでゴミ箱へぽい。やっと落ち着いた、とでも言わんばかりに圭介は大きく息を吐いた。 圭介さんと同じ名前、同じ歳の青年、山口圭介は一年前から一緒に暮らしてる、所謂ルームシェアのお相手だ。 物価が安いとは言えない新京都でアルバイト生活をしてる若者が住処を見つけるのは意外に大変で、私達の住んでるアパートの他のメンバーも、大抵が二人で部屋を折半して暮らしている。 かくいう私と圭介も、不動産屋で偶然であって、利害が一致したからこうして一緒に暮らしているわけで。 …こんなに、仲良くなる予定じゃなかったんだけどなぁ。 「そういや、」 「なに、圭介ー」 「昨日、が帰ってきたあとで、木田から電話があったぞ」 「…………!!」 忘 れ て た ー ー !!! そういえば私、圭介さんに『帰ったら電話しますから』って言ったじゃん!うわ、それも忘れて寝ちゃったんだ!最悪だ私!圭介さん、ごめんなさいー!!圭介さんの愛が、薄れたわけじゃないんですよーー!! 「ど、どうしよう圭介!?圭介さん怒ってた!??」 「いや。どーせいつものことだって、あいつもわかってるだろ。帰ってくるなり寝た、って伝えたら、逆に起こすなって言われたくらしだし」 …あぁ、圭介さん!あなたってお方はどうしてそんなに素敵なんですか!! 不肖、再度惚れなおしました! 「…朝から百面相もいいけど、朝飯できてるからとっとと着替えて来いよ」 「圭介さん…は、は感激です!」 「ダメだな、これは」 それから五分後に、今度はフライパンとオタマをもった圭介が、再度部屋にやってきたことは言うまでもない。 |