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新聞の一面は、四色のダイヤがフランスの美術館からイギリスに移動したという三日前の出来事だった。
もともと、ヨーロッパの大企業が所持しているものだ。展示場所が変わることは全然おかしいことじゃない。
だけど、今回はかなり問題だと思う。

新聞にはなにも載っていない。
俺もきっと、そういう眼で見ていなければ気付かなかったと思う。

「…だけど、これは違う」

もしかして、これを?と思わなかったわけじゃない。
だけど、彼が師事している男は決して日本から離れないだろうという確信があった。
だから、違う。絶対に、これじゃない。

「…大丈夫。絶対、見つける」

開いたままの新聞を放り投げたら、ひらひら雪みたいに俺の頭の上に降ってきた。
何千の活字で埋め尽くされた視界。この中から、たった一文字を探すのは、きっと大変なんだと思う。
今も生き残っている何億人という人間の中のたったひとり、それを見つけるのと、どっちが難しいんだろう。

数少ない手がかりが途切れるたび、諦めることを考える自分がいないわけじゃない。
だけど、それでも考える。

俺に出来るたったひとつのことは、もうそれしか残ってないんじゃないかって。

「だから、大丈夫」

風向きは不明、視界は不良。目的地まであとどれだけあるのかもわからない。

それでも、大丈夫。

マホウの言葉を口にして、まだがんばれると心に誓った。