#0-4




「まっさか、この街に最初からあったとはねー」

先代も人が悪い。どうせ知ってたんだろうから、教えてくれたって罰はあたらないだろう。

三年ぶりに戻ってきた故郷で、空を見上げながら呟いた。
この街の空の色が好きだった。
逃げ出すために、断ち切るために。世界中、色んな空の下を走り回ったけれど、やっぱりこの空だけは、どこの街とも違っている。

「故郷ってもの、悪くないよなぁ」

いつか、全てを終わらせた時に住まう場所。
ずっと探しているけれど、今のところはこの街が有力だ。

「…さて。感傷に浸るのはここまでにして、そろそろ動くか」

とりあえず、先代に挨拶して三年間放置していた家を片付けるか。
そのあとは物置からウンディーネを持ってきて、動くかどうかチェックして、ついでに三年で変わった街の把握をしなければ。
やならければならないことはいくらでもある。だから、思い出なんて二の次だ。

「ついでに噂流したら、他のやつも集まってきたりしないかなー」

全ては楔を断ち切るため。
そのためなら、きっと俺はなんでもできる。